更新日:2026年1月28日
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この記事では、アジャイル開発の概要やウォーターフォール開発との違い、導入するメリット・デメリットなどを解説します。

アジャイル開発はシステム・ソフトウェア開発手法のひとつであり、近年注目されています。実際に自社の開発課題を解決するために、アジャイル開発の導入を検討している担当者は多いのではないでしょうか。
この記事では、アジャイル開発の概要やウォーターフォール開発との違い、導入するメリット・デメリットなどを解説します。アジャイル開発におけるAI活用や、DevSecOpsの関係性についても触れているのでぜひ参考にして下さい。

アジャイル開発とは、ソフトウェア開発において通常1週間から4週間程度の反復期間を設定し、企画から開発、テストまでの工程を機能単位ごとに繰り返し進めていく開発手法のことです。「アジャイル」という言葉には、「素早い」「機敏な」という意味があり、その言葉の通りアジャイル開発はスピード感のある開発が可能です。
近年ビジネス環境の変化が激しく、日々変化するニーズや市場に柔軟に対応していく姿勢が必要です。アジャイル開発ならスピード感を持って開発を進められるだけでなく、仮説検証を含めた柔軟な開発が可能になります。
物事の予測が立てにくい不確実な要素が多い時代の中で、顧客ニーズにマッチした新しい価値を創造するための手法としてアジャイル開発が注目されているのです。
「アジャイルソフトウェア開発宣言」とは、17名のソフトウェア開発者が議論を行なって文書としてまとめたアジャイル開発の原則のことです。
2001年に公開されたことをきっかけに、世界中にアジャイル開発の考え方が広まり、多くのソフトウェア開発者達に支持されました。
アジャイルソフトウェア宣言では、アジャイル開発を実現するために以下の4つの価値を示しています。
※出典:アジャイルソフトウェア開発宣言
アジャイル開発が登場する前にはウォーターフォール開発が主に活用されており、ソフトウェア開発の初期段階として位置付けられています。
ウォーターフォール開発は機能単位ごとに開発工程を繰り返すアジャイル開発とは異なり、開発前にすべての機能計画を立て、その計画通りに開発を進める手法になります。つまり、要件定義から設計、実装、テスト、運用といった各工程を順序立てて直線的に開発を進めていきます。
開発対象の機能を事前に決定して開発を進めるため、最終的なリリース時期がわかりやすいというメリットがあります。一方、開発前からすべての工程が決まっているため、仕様変更がしにくいなどの課題もあります。
アジャイル開発にはさまざまな開発手法がありますが、中でも「スクラム」と呼ばれる開発手法が最も採用されています。スクラムとは、少人数のチームにわかれて密にコミュニケーションをとりながら開発を進める手法です。
実際に「17th State of Agile Report」の調査では、アジャイル開発手法の中で、63%がスクラムを採用していると報告されています。なお、スクラムの人気は2006年の最初の調査以降続いています。
なぜ数ある開発手法の中でスクラムが最も採用されるのでしょうか。理由のひとつとして汎用性の高さにあると考えられます。スクラムはシンプルなフレームワークであり、さまざまな開発プロジェクトに活用することが可能です。
また、スクラムのルールが示された「スクラムガイド」は、18ページ程度の少なめのボリューム感となっており、内容もシンプルです。そのため、スクラムの全体の流れや仕組みについて理解がしやすく、自社の開発プロジェクトに合わせて応用がしやすいといえます。
さらに、スクラムは有名な手法であることから開発事例も多く、情報収集が容易であるという事情も採用される理由として挙げられます。
スクラム以外のアジャイル開発手法には以下のようなものがあります。
エクストリーム・プログラミングは、短い開発サイクルの中で顧客の要望を柔軟に取り入れながら開発を進める手法であり、仕様変更への迅速な対応を重視しています。
2人1組で開発を進める「ペアプログラミング」を採用しているのが特徴で、この作業スタイルによりコード品質の向上やトラブルの早期発見・解決などを実現できます。
開発プロセスにおける状況の変化を前提とした手法であり、顧客とのやり取りも多く行われるため、ニーズを最大限に反映できる点が大きなメリットだと言えます。
ユーザー機能駆動開発とは、ユーザーの視点から見て、本当に必要な機能に焦点を当てて開発を進める手法です。開発の流れとして、まずは全体モデルの作成によって開発の全体像を明確化します。その上で搭載すべき機能をリスト化し、機能ごとにチームを編成して計画から開発、テストを繰り返し行います。
開発する機能によってチームを分けて作業を進めるため、アジャイル開発の中でも大規模で複雑なプロジェクトにも対応しやすいという特徴を持ちます。
リーンソフトウェア開発とは、「リーン生産方式」の考えをソフトウェア開発に応用した手法を指します。リーン生産方式は、日本のトヨタ自動車から始まった考えであり、無駄を徹底的に排除し、必要なだけ製品を生産することに重きを置いた手法です。
このリーン生産方式をソフトウェア開発に取り入れたリーンソフトウェア開発では、以下の7つの原則に基づいて開発を進めるのが特徴です。
適応的ソフトウェアとは、複雑で変化の激しい開発環境に適応することを重視した手法です。以下の「思索」「協調」「学習」という3つのサイクルを繰り返して短期集中で開発を進め、成果物のクオリティを高めるのが特徴です。
| 思索 | ・開発する機能の検討や手順の決定 ・主に開発計画の立案・顧客の要求分析 |
|---|---|
| 協調 | ・思索の計画に沿った開発の実施 ・チーム内で密にコミュニケーションを図る |
| 学習 | ・成果物の品質のレビューを実施 ・次のイテレーションに向けた改善策の検討 |
このサイクルを繰り返すことで、継続的に変化するプロジェクトにおいても臨機応変に対応でき、高品質なソフトウェアを提供することが可能です。

アジャイル開発を導入する際には、よく使用される関連用語やKPIの理解も必要になります。
アジャイル開発の関連用語は以下の通りです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| リリース計画 | ・アジャイル開発全体を管理するための計画 ・開発のゴールやサイクルの期間、ユーザーストーリーの優先順位などを決定する |
| ユーザーストーリー | ・ユーザー視点で、「誰が」「何を」「どうしたいのか」を簡潔に記述したもの ・チームで共通認識を持つことで、ユーザーにとって価値ある機能を開発できる |
| スプリント(イテレーション) | ・設計・開発・テスト・改善の一連の工程を短期間で繰り返す開発サイクル ・スクラム開発ではスプリントという言葉が使われる |
| プロダクトオーナー | ・プロダクトにおける方向性を決定し、価値を最大化する責任を持つ ・プロダクトバックログの作成や、ステークホルダーとの調整などの役割を担う |
| レトロスペクティブ | ・1回のスプリントごとに実施するミーティング ・改善点などを振り返り、次の開発サイクルに活かす |
アジャイル開発の代表的なKPIは以下が挙げられます。
| KPI | 意味 | |
|---|---|---|
| リードタイム | ・顧客の要求を受け取ってから完了するまでの平均時間 ・リードタイムが短いほど、価値提供を迅速に行えている | |
| サイクルタイム | ・チームがある一連の作業を完了するまでの時間 ・パフォーマンス改善やボトルネックの特定に役立つ | |
| リリース頻度 | ・どのくらいの頻度でリリースできているかを測る指標 ・頻度が高いほど変化への対応力を高められる | |
| スプリント達成率 | ・設定したスプリント目標において、どのくらい達成したのかを示す指標 ・目標の妥当性やチームの成熟度を判断できる | |
| 顧客満足度 | ・顧客がプロダクトや開発プロセスに対して価値を感じているかを測る指標 ・顧客の要望を最大限に反映できているかどうかが重要な要素になる |
アジャイル開発の導入はどのように進められるでしょうか。まずは導入の初期フェーズですべきことを解説します。
アジャイル開発を自社のプロジェクトに導入する際には、まず「なぜアジャイルなのか」「導入することで何を解決したいのか」という目的をはっきりさせておくことが大切です。
たとえば、「プロジェクトの特性上、頻繁な仕様変更が予想されるため」「現状リリースまで時間がかかっているため、アジャイル開発によってプロダクトの市場投入を早めたい」など、プロジェクトの内容や自社の課題と紐づけて目的を明らかにします。
また、プロジェクトのゴールやビジョン、KPIなども決定し、チーム全体で共有できる仕組みを構築しておきましょう。
次にアジャイル開発を進める上でチーム編成と役割の整理を行います。具体的に「誰が」「どのような責任・役割」を持つのかを明確にします。アジャイル開発は変化への柔軟性やスピードが求められる手法であるため、以下のような特徴を持つメンバーを集めるのが理想です。
なお、スクラム開発においてはプロダクトオーナー、スクラムマスター、開発者を含めたスクラムチーム全体で10人以下で編成することが推奨されています。
アジャイル開発はどのような流れで進められるでしょうか。IPAの「アジャイル開発の進め方」を参考にスクラムを例に全体の流れを紹介します。
まずプロダクトバックログの作成を行います。プロダクトバックログとは、開発したいプロダクトが提供する価値をまとめたリストのことです。具体的には、顧客が求める機能やユーザーエクスペリエンスなどを洗い出してリストを作成していきます。
この際、リストは作業の優先順位をつけて並んでいることがポイントです。また、作成するリストは顧客を含むプロジェクトの関係者全員に共有する必要があるため、誰もが理解できる言葉で記載しなければなりません。
「スプリント」とは、スクラムにおける開発工程の反復(作業)期間のことです。スプリントが開始される前にスプリントプランニングを実施しましょう。具体的には、作成したプロダクトバックログのリストの中から対象のスプリントで扱う項目を選び出します。ここで選び出した項目は「スプリントバックログ」と呼ばれます。
その後細かにタスクに落とし込み、スクラムチーム内で作業を分担します。なお、各タスクにおいては一般的に2〜8時間程度の時間単位で見積もられます。
実際にスプリント内の開発作業を実施します。スプリントの途中では、スクラムチーム内で活動状況を報告する「デイリースクラム」が行われます。デイリースクラムは、達成すべきゴールに向けて課題になっていることを共有し、チーム全員が協力して解決を目指すためのミーティングです。
無事にスプリントが完了した段階では「スプリントレビュー」と呼ばれるミーティングが開催され、関係者全員で完成したプロダクトのデモンストレーションを行います。
また、スプリントレビューの後には「スプリントレトロスペクティブ」が行われ、開発におけるプロセスを振り返ります。うまくいかなかったことは改善策を洗い出し、次のスプリントに活かします。
アジャイル開発には以下のようなメリットがあります。
アジャイル開発は機能を小さな単位にわけて開発とリリースを繰り返して進めるため、結果的に優先度の高い機能から素早く価値を提供することが可能です。また、最初にプロダクトのすべての機能計画を立ててから開発するわけではないため、本来不要だった機能に関するドキュメント作成などに時間と手間をかけずに開発を進められます。
一方、ウォーターフォール開発の場合は計画を重視することから、開発前に要件定義書や設計書などの作成に時間をかける必要があります。ビジネスにおいて「競合優位性を確立したい」「早期に顧客のフィードバックを収集したい」などの目的があるなら、小さな単位で素早く価値を提供できるアジャイル開発の採用が適切だといえます。
アジャイル開発は小さな単位で開発を進めるため、開発途中で顧客の要望や市場の変化に応じて優先順位や仕様を見直すことができます。顧客ニーズや市場調査の結果を踏まえながら柔軟に開発を進めることで最大限の価値を提供できるため、顧客満足度の向上にもつながります。
一方、ウォーターフォール開発ではプロジェクトの初期段階で計画を確定させるため、途中での変更が困難になりがちです。ただし、アジャイル開発で変更に対応できるといっても、変更自体のコストや影響度は慎重に評価する必要があります。
たとえば、すでに開発した機能に大きな変更が必要な場合は、再設計や再実装のコストが発生します。アジャイル開発は変更を受け入れやすい仕組みを持っていますが、それはすべての変更が容易であることを意味するわけではありません。
アジャイル開発は機能単位に区切って開発からテスト、リリースまで実行するため、テストの段階で不具合や問題が発生した場合でも手戻りの工数を最小限に抑えられます。
ウォーターフォール開発の場合は、事前に決めた計画通りに開発を進めるため、不具合が発生した箇所によっては手戻りの工数が大きくなってしまうデメリットがあります。アジャイル開発なら、前提として開発している範囲が少ないため、大きな手戻りが発生しにくいです。
アジャイル開発では、小さな単位での開発を繰り返し、振り返りを行うプロセスが組み込まれています。これにより、チームは実践と改善を重ねながら学習を進める機会を得られます。たとえば、スプリントごとの振り返り(スプリントレトロスペクティブ)では、うまくいったことや課題を議論し、より良い進め方を模索します。
また、開発途中では毎日ミーティングが実施され、品質の高いプロダクトを生み出せるようメンバー同士が意見を出し合います。そのようなプロセスを通してチームワークの向上も期待できるでしょう。
アジャイル開発にはデメリットもあるため、対策を踏まえて把握しておくことが大切です。
アジャイル開発では、詳細な計画を前もって確定させない代わりに、反復的な開発を通じて計画を継続的に見直し、調整していきます。そのため、従来のウォーターフォール型開発のように、プロジェクト全体の詳細なスケジュールを初期段階で確定することは難しくなります。また、顧客の要望で何度も仕様変更が発生した場合、最終リリースまでのスケジュールが伸びてしまう可能性もあります。
アジャイル開発において適切なスケジュール管理を行うためには、チームの開発速度を計測、定期的に計画と実績を比較し、場合によっては優先順位や計画を見直す必要があります。
アジャイル開発では、開発途中での変更を受け入れやすい特徴がある一方で、その柔軟性を適切にコントロールしなければ、本来目指していたプロダクトの方向性から逸れてしまうリスクがあります。
たとえば、顧客からの仕様変更や機能追加の要望を受け入れ過ぎていると、プロジェクト全体の方向性を見失ってしまう場合があります。また、顧客との摩擦や齟齬が生まれてしまう可能性もあり、プロジェクトがスムーズに進まないという事態も招いてしまうでしょう。
このようなことを避けるためには、個々の単位だけでなく定期的な全体像の把握と、関係性全員での認識の擦り合わせが必要です。
アジャイル開発にはさまざまなメリットがありますが、プロジェクトの特性・内容によっては向き・不向きがあるため事前に把握し、自社に適した開発手法を採用しなければなりません。
まずアジャイル開発が向いているプロジェクトは以下の通りです。
アジャイル開発は、頻繁な仕様変更や優先順位の変更が想定されるプロジェクトに向いています。これは事前に綿密な計画を立てずに機能ごとに開発を進めることから、急な変更が生じた場合でも少ない手戻りで対応できるからです。
たとえば、Webサービスやスマホアプリ開発の案件においては市場のトレンドに応じて仕様変更や機能追加が頻繁に発生しやすいため、アジャイル開発なら柔軟な対応を実現できるでしょう。
仮説ベースで機能開発を進めるといった探索的なプロジェクトにおいてもアジャイル開発が向いています。プロジェクトの大まかな方向性さえ決まっていれば、細かな要件が確定していなくてもアジャイル開発なら試行錯誤しながら作業を進められます。
たとえば、実際に市場に投入してみて「想定していたよりユーザーの反応が良くなかった」など仮説が外れた要素がある場合でも、その後新たな機能開発を検討するなどの対応が可能です。
アジャイル開発は顧客からの要望を頻繁に取り入れることを重視した手法であるため、発注者が積極的に開発プロセスに関わるプロジェクトでも向いています。
発注者が開発チームの一員として細かに意見したいという姿勢がプロジェクト開始前から見られる場合は、アジャイル開発を採用することでフィードバックを最大限に活かした精度の高いソフトウェア開発を実現できるでしょう。
以下のようなケースではアジャイル開発に向かないため、導入は慎重に検討すべきです。
大前提として要件が明確に決められており、開発途中での仕様変更の可能性が低いプロジェクトではアジャイル開発の柔軟性を活かすことはできないでしょう。
固定された要件と納期・コストの両方が明確に存在するケースでは、ウォーターフォール型開発の方が適しています。
状況的に開発関係者間での円滑なコミュニケーションをとることが難しいケースでもアジャイル開発の採用は厳しい可能性が高いと言えます。たとえば、プロジェクトの特性上多くのステークホルダーが集まる場合、アジャイル開発で求められる頻繁なミーティングの実施が難しいでしょう。
その他にも、開発メンバー間の物理的な距離の問題もコミュニケーションの希薄化を生む原因になります。
アジャイル開発は積極的な意見交換によって品質の向上や早期の課題解決を目指すため、上記のようなケースでコミュニケーションが活性化しないと開発が上手く進まないリスクがあります。
政府や医療、金融関連などの規制や要件が厳しい業界では、安全性や有効性、健全性を確保するために厳格なドキュメント作成や複数回に及ぶ承認プロセスが求められるケースがあります。
そういったケースでアジャイル開発を採用する場合は、ドキュメントや承認プロセスをアジャイルの開発プロセスに組み込む工夫が必要になります。さまざまな規制に対する対応とアジャイルの両立を図るためには、適切なツールや体制の整備が求められます。

アジャイル開発を成功させるために以下のポイントを押さえておきましょう。
アジャイル開発では、柔軟な仕様変更に伴うメンバー間での擦り合わせや協力が重要となります。必ずしもアジャイル開発の経験が豊富である必要はありませんが、ここまで紹介してきたようなアジャイル開発の特徴を理解し、オープンな姿勢でチームや関係者とコミュニケーションを取れる人材が求められます。
「プロダクトオーナー」や開発チームを支援する「スクラムマスター」の役割も重要です。場合によってはアジャイルコーチによるトレーニングを活用したり、経験豊富な外部の専門家にサポートを依頼したりすることも有効です。
アジャイル開発を成功に導くためには、顧客を含めた関係者全員がコミュニケーションを密にとっていくことが大切です。先ほど説明したような「デイリースクラム」や「スプリントレビュー」などのミーティングを定期的に実施し、メンバー間でのコミュニケーションを活性化させましょう。
チームメンバーが自由に意見を出しやすい雰囲気の中で開発を進めることで、進捗管理や品質の維持もしやすくなります。特に上下関係などの関係性を取り払って、お互いが率直に提案や指摘をし合えるような環境ならプロジェクトの成功率をより高められるでしょう。
アジャイル開発をスムーズに進めるためには、CI/CDなど自動化のテクノロジーを取り入れることもポイントです。CI/CDとは、顧客にプロダクトを素早く提供するために、ビルド作業やテスト、リリースの工程といった、開発フローの一部を自動化する手法のことです。
アジャイル開発とCI/CDの相性は良く、機能単位ごとの開発フローをCI/CDによって自動化することによって、一定の品質を維持したままリリース頻度の向上を実現できます。CI/CDについては以下の記事で解説しているので、併せてチェックしてみてください。
CI/CDとは?意味や導入のメリット・デメリット、ツールの選び方を解説
アジャイル開発においてはチームメンバーと顧客との間で信頼関係を構築することが求められます。顧客側が開発の中でどのようなことが行われているのかが把握できないと不安を抱いてしまいます。たとえば、成果物が納品されるまで状況を掴めないような進め方だと、認識の齟齬が生まれる原因になるでしょう。
そのため、アジャイル開発で扱う情報においては常に透明性をもたせることが大事です。
たとえば、以下のような情報に透明性をもたせて、顧客とチームメンバーとの間でスムーズに情報共有できるような仕組みを構築しておきましょう。
情報の透明性を保ち、チームの誰でも同じ情報にアクセスできる状態のことをSingle Source Of Truth(SSOT、信頼できる唯一の情報源)と呼び、これがあることでチームの自律的な行動を促すことができます。こちらに関する記事は下記が詳しいため、併せてチェックしてみてください。
アジャイル開発の成功事例として、GitLabを導入したドイツテレコム社のケースを紹介します。
同社は、ソフトウェアの市場投入までの時間に対して大きな課題を抱えていました。ソフトウェア開発ライフサイクルの効率化のために既にウォーターフォール型開発からアジャイル開発手法へと移行していたものの、各チームが使用する自動化ツールに一貫性がなく、DevOpsの土台となるプラットフォーム構築の必要性を感じていました。
そこでCI/CDやAIなどの自動化テクノロジーを活用できるGitLabを導入したことによって、社内の多くの開発者がアジャイルプログラムで共通のツールを使用するようになり、生産性向上や市場投入までの時間短縮を実現しています。
ドイツテレコム社の事例詳細については以下の記事をご覧ください。
※参考:ドイツテレコムがGitLab UltimateでDevSecOpsの変革を推進

アジャイル開発が失敗してしまうケース例としては以下が挙げられます。
アジャイル開発においては、急な仕様変更や市場の変化に迅速に対応するため、予算やスケジュールもその都度柔軟に変更する姿勢が求められます。
その際、発注側の現場担当者がアジャイルの特性について理解していても、経営層に理解がなければ予算やスケジュール変更の承認が下りない可能性があります。その結果、プロジェクトがスムーズに進まず失敗に繋がるという結果を招いてしまうでしょう。
アジャイル開発を成功に導くためには、経営層もアジャイルの本質を十分に理解し、変化に強い開発体制を構築しておくことが求められます。
大前提としてアジャイル開発に不向きなプロジェクトでの導入は失敗を招く可能性が高くなります。
先ほども紹介したようにアジャイル開発には向き不向きがあるため、プロジェクトの特性や自社の課題を考慮しながら本当にアジャイル開発の導入が自社の目標達成に貢献するのか慎重に見極めなければなりません。正確な導入可否の判断を行うためには、責任者がアジャイル開発の強み・本質も十分に理解しておく必要があります。
アジャイル開発は状況の変化に応じてその都度対応しながら開発を進めるため、チーム内での細かなコミュニケーションが重要な要素になります。
チーム内でのコミュニケーションが機能していない場合、認識のズレが生まれ、後の工程で手戻りが発生するなどのトラブルが起こる可能性があります。コミュニケーションが不足してしまう原因としては、メンバーが自由に意見を出し合えるような心理的安全性が現場で確保されていないことが考えられます。リーダーが中心となり、メンバー同士が提案や指摘を積極的に行える環境を構築することが大切です。
プロダクトオーナーやスクラムマスターのようなアジャイル開発を成功に導くために重要となる存在が本来の役割や責任を果たせていない場合、メンバーが最大限のパフォーマンスを発揮できません。
たとえば、プロダクトオーナーが十分な決定権を持っていないと意思決定の遅延や方向性のブレなどが生じてしまうため、メンバーを正しくリードできないでしょう。その結果、生産性やプロダクト品質の低下を招いてしまいます。
そのような失敗を招かないためには、リーダーは自身の役割を自覚して行動することが求められます。
アジャイル開発では、仕様変更や機能追加などに対して柔軟に対応でき、スピード感を持って開発を進められます。その一方で、セキュリティが後回しにされたり、おろそかにしてしまったりするケースも多いといわれています。この課題に対応するには、リリース直前に実施される人手による脆弱性診断やペネトレーションテストだけでなく、静的解析ツールやコンテナスキャンなどの自動化されたセキュリティテストをCI/CDパイプラインに組み込むことが効果的です。
なお、セキュリティ対策の重要性はアジャイル開発に限ったことではありません。IPAの調査から近年組織ではさまざまなセキュリティインシデントが発生していることがわかります。開発の早い段階でセキュリティ上の問題を発見し、迅速な対応が可能になるこれらのプラクティスは「シフトレフト」と呼ばれ、セキュリティリスクをより早い段階で見つけ、手戻りを少なく品質をあげていく手法として、アジャイル開発以外での開発手法でも重要であると言われています。

近年はAI・DevSecOps・DXといった新しい技術やアプローチが登場し、アジャイル開発との連携が重要視されています。
アジャイル開発を採用する際には、AIを積極的に活用する視点も持っておきましょう。
たとえば、前述の通り、アジャイル開発ではリリース直前での脆弱性診断だけでなく、開発段階などでも常時セキュリティスキャンなどで脆弱性を検出することが重要です。この時にGitLab DuoのようなAIを活用することによってソフトウェアの脆弱性をより効率的に把握して修正でき、開発におけるセキュリティリスクを軽減することができます。
その他にも、テストコードを書いたり、ソースコードからドキュメントから詳細設計書やパラメータシート相当のものを作成するなど、特にアジャイル開発でよく行われることにAIの支援を受けることができ、開発効率の向上を実現することができます。
これらの機能のデモもありますので、参考にしていただければと思います。
先ほど挙げたアジャイル開発のセキュリティの課題においては「DevSecOps」の必要性が高まっています。
DevSecOpsとは、開発(Dev)・セキュリティ(Sec)・運用(Ops)を連携した開発アプローチのことです。DevSecOpsでは、セキュリティを後回しにすることなく、開発工程(Dev)の段階で対策を行い、ソフトウェアの安全性を高めます。
アジャイル開発とDevSecOpsは親和性が高く、両者とも迅速なリリースと継続的な改善を推進する手法や考え方です。つまり、アジャイル開発においてDevSecOpsのアプローチも取り入れることで、セキュリティレベルを高めながら、迅速なソフトウェア開発を実現できます。補足として、アジャイル開発と同様、ウォーターフォール開発でもDevSecOpsの考え方は積極的に取り入れるべきポイントです。
なお、「GitLab」ならDevSecOpsのアプローチを踏まえたソフトウェア開発が可能です。アジャイル開発の代表的手法である「スクラム」を1つのプラットフォームで運用することもできるため、ぜひ自社のプロジェクトにお役立て下さい。
アジャイル開発はDX推進に大きく貢献する手法でもあります。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、IT技術を活用して企業のビジネスモデルや業務プロセスを改革し、顧客や社会に対して新しい価値を提供する取り組みを指します。
DX施策においては新しい技術を積極的に導入することから不確実性が高く、さらに市場の変化にも柔軟に対応しなければなりません。
開発途中の仕様変更に強みを持つアジャイル開発ならDXプロジェクトとの親和性が高く、試行錯誤しながら段階的に開発を進められるため、自社の目標を達成しやすくなるでしょう。
「アジャイル」という概念は、開発領域だけでなく企業の組織改革のためのアプローチとしても注目が集まっています。具体的には、競争が激化するビジネス環境の中で柔軟かつ迅速の対応ができる「アジャイル組織」と呼ばれる組織構造があります。
アジャイル開発と同じく、短期間で実行と改善・検証を繰り返して戦略を進めるのが特徴で、ボトムアップによる意思決定スタイルが採用されます。これにより、業務における意思決定スピードが加速化し、企業の競争力の強化にも繋げられます。
最後にアジャイル開発に関するQ&Aを紹介します。
「DX白書2023」によると、アジャイル開発を「全社的に活用している」「事業部で活用している」と回答した企業の割合の合計は22.9%となっています。米国の場合は53.9%となっているため、アジャイル開発の普及率において日米差は大きいことがわかります。
アジャイル開発にはさまざまな手法がありますが、自社の状況や目的にあわせて最適な手法を選ぶ必要があります。なお、複数の手法を組み合わせるなどの方法も検討できます。
以下で選定のポイントと例を紹介します。
【例】チーム全体で10人以下の小規模なチームならスクラムを採用する
【例】仮説ベースで開発を進め、仕様変更が多いプロジェクトならスクラムやXPを採用する
【例】ユーザーにとって価値の高い機能からリリースしたいならFDDを採用する
アジャイル開発なら、開発途中で発生する急な仕様変更にも柔軟に対応でき、顧客ニーズにマッチした価値を提供することが可能です。
しかし、アジャイル開発に限ったことではないですがセキュリティ対策における課題もあるため、DevSecOpsのアプローチも積極的に取り入れていく姿勢も求められます。
DevSecOpsプラットフォームを提供するGitLabでは、世界39か国、5,000人を超えるDevSecOps専門家のインサイトが詰まった完全版レポートを無料で公開しています。ソフトウェア開発におけるAI活用や、DevSecOpsに興味がある人はぜひご覧下さい。
監修:佐々木 直晴 @naosasaki (GitLab合同会社 ソリューションアーキテクト本部 シニアソリューションアーキテクト)
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